信じて騙された方がマシか、疑って無難に済ませることが大事か
フィオリエ:信じて騙されるほうがいい
セルヴァ:信じず無難無事なことが大事 エルミオ:…。@1300~1310頃までのいつか★関連話:メイン「ユンの予感」
「フィオリエは、自分を大事にしろと言う割に、人を信じすぎる」
「? その二つのどこがつながるんだ。つうか、信じないでどうやってやっていく?出会って初っ端から疑ってかかるのか?そりゃ明らかにやばいのは警戒するし、最初は、なんだ、常識の範囲内で、というか、多少は、どういうやつか見るけどさ」
「本当の悪人は、平気で笑顔でそこにいるんだ。殺した相手の家族がやってきても、穏やかに、優しく、笑うんだよ。罪の意識もない。悪いなんて思えなくなってる」
「だからって誰でも彼でも疑ってかかるわけにはいかんだろ。仲良くなれる相手とも仲良くなれなくなるぞ」
「でも、騙されて、殺されるかもしれないんだよ。それは、自分だけじゃなくて、自分の周りの人も巻き込むということだよ。自分を大事にしろっていうなら、簡単に他人を信じるな、って言うと僕は思う」
「…。そりゃ、そうかもだけど…。じゃあなんで、セルヴァは俺たちについてきたんだ?」
「…それは…」
ユンが信じた人たちだったから…そんな他人任せな理由だけ?悪い人たちに見えなかったから…それでは自分が言ったことが早速破綻してしまう。どうしてフィオリエとエルミオを信じた?
違う違う。どうしてついてきたか?それは、自分で決めたことだ。
「僕の力が、二人と一緒にいくほうが役立つと思ったから。僕は、悪魔なんていなくならせてやるってユンに誓ったんだ。僕は、回復術士だから。エルミオが話してくれた、同盟の、力になれると思った。エルミオとフィオリエは前衛だから、僕が役立つと思った。だから、僕は、ついてきた…」
ああ、論点がずれている。だけど、理由は、見当たらなかった。
信じる信じないよりも、自分自身の進む道だから、ここを歩いてきたのだ。
「あぁ…うん、そうか…。…?」
「セルヴァはさ、周囲に仲間が居る状況で、俺たちと話すことができたね。そして、俺たちの話に賛同してついてきた。気持ちが一緒だったんだ。
それに、俺たちが、『仁』のリーダーと長い付き合いだと知っていた。ユンも俺たちを信じてくれていた。きっとユンも背中を少しだけ押してくれたんじゃないかな?
それに、俺たちは、セルヴァたちを二度、助けた。
これで、信じるには十分だったんじゃないかい?」
なるほど、とセルヴァもフィオリエも納得して頷いた。そうすると次には、さっきまで議論していたことがなんだかくだらないように思えた。だが、エルミオは続ける。
「そうやって、運良く信頼できる根拠がたくさんできればいいけれど、公募パーティとか、旅先で偶然出会った人とか、なかなか根拠ができない人のほうがよっぽど多いよね。
出会い方によっては、その人たちと親友になれたのかもしれない。だけど、心を許しすぎれば、相手が悪巧みをしていたとき、傷つくのは自分だけでは済まないこともある。
出会いは、時の運だね。親友を大事にしたいものだ」
二人は納得して、顔を見合わせた。いい落しどころを見つけてしまった。
実際にどうするか、どの程度で信用に足ると判断するのか、そこが一致していないことが、問題だったようだ。
「まあ、俺も、ほいほい信じてたわけじゃないけど…気持ち、もうちょっと気をつけっかな…」
「…うん」
僕はやっぱり長く付き合わないと信じるの無理かも、と思ったセルヴァの気持ちを見通して、フィオリエはにっと笑った。
「まあ無理すんな、仲良くなる係は俺に任せろ」
「…うん」
ほっとして少し微笑んだ。
一人でどうにかするのではなく、こんな分担も、いいかもしれない。
「信じる信じない(略)な話」fin.
***あとがき***
どちらかといえばフィオリエ派だった私です。
セルヴァとフィオリエが言い争ってくれて、んー…と思っているところに、エルミオが出てきて、なんかけっこう上手いこと言ってくれました。
フィオリエ派でしたが、書き始め~書き終わりまでの数十分で、書く前よりもずっとセルヴァ側の言い分を聞く気持ちが生まれ、
エルミオのまとめで納得し、やはり難しいなあと思いました。
そして予想外なことに、信じる信じないということだって、なにも一人でやる必要は必ずしもないのかもしれない、ということまで思い至りました。
これからもまだ発展するかもしれない。
いやはや、言語化してみるって大切。
この三人にはお世話になっています。私の半分ずつをフィオリエとセルヴァは持っていて、エルミオはそれをどこからか見てくれている、という感じの人物三人です。